統合失調症

概要
統合失調症を発症している本人には心理療法と心のケアをおこない、その家族には精神的支援をおこなっております。
一般には理解しがたいとされている統合失調症ですので、本人のつらさや苦しみがどういうものなのかを、ご本にも周りにいる人にも分かるように説明します。

心のケア
統合失調症においては焦らされるようなことや責任を負うような状況が起こると、症状が悪化したり、幻聴が頻繁に聞こえたりしますので、できる限りそういう状況は避けることです。


精神状態

概要
幻聴・幻声による悪口や非難の声が聞こえてきます。その声に怯えると同時に、悪口を言っている彼らに対して怒りがこみ上げてくるので、怒りを爆発させるということが起こります。感情面では興味や楽しさが感じられなくなり、何事も楽しくなくなります。思考の面では考えが途切れたり、自分が何を考えているのかがわからなくなります。記憶の面では出来事や言われたこと覚えていられないということが起こります。すごく疲れやすく疲労をすぐ感じるので、何かをし続けることが難しくなります。

被害意識と加害意識
統合失調症患者は被害意識と加害意識の両方を同時に抱えています。つねに自分は誰かに悪いことをしてしまっている、あるいは自分が存在していることが世の中に迷惑をかけているという加害意識と罪悪感をもっていて、そこに幻聴によって「お前はどうしようもない奴だ」とか「お前なんてやっつけてしまうぞ」といった脅迫声が聞こえてくると、被害意識が膨らみ、周りの人たちに対して「自分が迷惑をかけていることはわかっているが、そこまでしなくてもいいじゃないか」という気持ちを抱くことになります。つまり本人は加害者にも被害者にもなってしまうのです。


症状

幻聴
誰かが自分の悪口を言ってくる
テレビの向こうから自分に話しかけてくる

思考奪取
自分の考えていることや秘密にしていることがばらされている
自分のことがインターネットで流されている
盗聴器を仕掛けられている

連合弛緩
考えにとりとめがなくなってしまう
思考が飛び飛びになる
出来事や言われたことを覚えていられない

感情
感情の平板化
表情のかたさがみられる
興味の喪失
楽しさの喪失(アンヘドニア)

生活感
ずいぶん先の未来の予定まで考えている
環境の変化に弱く、さまざまな形で不安を表現する


幻聴について

幻聴とは
幻聴(幻声)とは、本人のなかに存在している「自分の感情、思考、感覚」が内側からではなく、外側から来るように感じられるために、他人が自分に向けて言っていると認知されるものです。ですから、本人にとっては現実に外から声が聞こえるのです。これを「内言語の外在化」と言います。

対応について
統合失調症患者に対して、聞こえてくる声(幻聴)を「それは幻聴なのであって、現実に聞こえているわけではない」と言って説得することは好ましくありません。本人には現実に聞こえているのです。現実に聞こえる声を「それは幻だ」と否定することは、患者の面目(めんぼく)をつぶすことになり、彼らの苦しい体験や壮絶な人生を否定することにつながります。


対人恐怖

迫害恐怖
統合失調症の核には「恐怖」が存在します。他者は何をしでかすかわからないという恐怖感覚が強められていて、他者という存在が自分をおびやかす存在に感じられ、他者を怖れることになります。たとえば、「誰かにやられる」とか「誰かに狙われている」といった迫害不安や迫害恐怖です。そのため、他者を拒否したり、交友関係をつくらないといった行動をしたり、情報が漏洩しないように部屋を遮断し閉じこもったりします。それゆえ、自分のことを他人には「分かられたくない」状態にあります。


理解を深めるために

生の感情の世界
統合失調症の患者さんは純粋な人がほとんどです。建前と本音を使い分けることも苦手です。それゆえ防衛機制を発動させないために、他人の言動を真に受けてしまって辛くなってしまいます。言い換えれば、人間の根源的・原始的な感情や欲望を生で体感してしまうために、外の世界が恐ろしいものと感じられるのです。そしてその恐怖ゆえ、頑(かたく)なになってしまいます。
そして、患者さんのその恐怖の生の感情がそのまま外へ出ていってしまうと、叫んだり暴れたり、意味のわからないことが口から出てくるということになり、周りにいる健常者たちは彼らの言動を理解できずに困ってしまうというわけです。

記憶力の低下・記憶の分断化
「経験から学ぶ」、「失敗から学んで同じことを繰り返さないようにする」といったことが難しくなります。記憶力の低下や分断化が生じるために、「学んで、そして習得して改善、柔軟に対応する」といった能力が阻害されるからです。それが統合失調症の一つの症状でもあります。


抗精神病薬中毒について

概要
抗精神病薬中毒になっている人が数えきれないくらいいます。抗精神病薬(向精神薬)をたくさん飲んでも効かないと分かっていながら、でも飲まないと不安でいられないという状態になっています。そのため抗精神病薬による症状、つまり副作用の症状で苦しまれている人がたくさんおられます。