発達性トラウマ
■概要
発達性トラウマ(発達性心的外傷)とは、虐待など精神的損傷を継続的に受け、周りの人からの助けを得られず、その後の生き方や対人関係態度に問題が生じ、いじめ等のつらい思い、しんどい思いを何度も繰り返して体験し、トラウマが積み重なり膨れ上がった状態をいいます。
◇ 自尊感情が低い(自分を好きになれない)
◇ 対人関係や異性関係をうまく作れない、偏る
◇ 感情の制御ができない
◇ 生きづらさを感じている(発達阻害など)
◇ 身体の具合が良くない。情緒が不安定。パニックが生じる
◇ 親に対する憎しみ・恨みが消えない
◇ 親と同じような生き方や行為をしている
(虐待、不倫、離婚、過度の飲酒、暴言暴力、不適切な異性とのつき合い)
発達障害との関連
■概要
アスペルガーなどの発達障害をかかえている人の場合は、トラウマが消えにくく、いつまでたっても過去の出来事や体験を覚えていることがみられます。また、知覚過敏を伴っている場合が多いので、トラウマがより強く意識あるいは感じられ、フラッシュバックが生じたりします。
人によっては、行為・言動に出てしまう場合があり、たとえば人を試したり、挑発したり、イライラさせるなどの言動によって、相手の怒りを引き出してしまいます。
伴う心理状態
■自分を知りたい欲求
自分を知りたいという欲求は誰でももっていますが、トラウマを抱えている場合は特に「自分を知りたい」という欲求が出てきます。というのは「なぜ自分がつらい目に遭わなければならないのか。こんな苦労しなければいけないのか。」という苦しみを理解し納得したいからです。自分は何のために生きているのかという価値が見出せなかったり、自分が何をしているんだかわからないという苦しみを抱えているためです。
■無意識の強迫
トラウマを抱えている場合に多く見られるのが「良くない状況に自分を追い込んでしまう強迫」が働くことです。さまざまな選択肢があって楽な道もあるのにもかかわらず、わざわざ自分をつらい道に進ませてしまい、それで人よりも苦労を背負うことが多くなっているというものです。世間でいわれる「壮絶な人生」になりやすい。その背後にはトラウマを解消するための心理が働いている場合があります。
また「幸せ恐怖」がある場合もあります。これは自分が幸せになることが申し訳ないと思ってしまう罪悪感・自責感です。
症状
■感情の身体化
トラウマは症状として表出することがあります。
家庭のトラウマで最も顕著なのは、精神症状としては「神経症」や「摂食障害」です。また、抑うつ、情緒不安定、罪悪感、空虚感、見捨てられ不安、イライラ、不満、自分をわかってほしい気持ちなどが生じやすい。
身体症状としては心身症や身体表現性障害、気管支ぜんそく、過呼吸、不安発作、どもり、じんましん、アトピー、腰痛、坐骨神経痛などが起こりやすい。
非行について
■概要
家庭の状況が悪かった場合、生活や生き方が荒れるなど非行に走る人も少なくありません。また、人格も荒(すさ)みます。本人からしてみれば何とか頑張って生きてきたわけですが、どうしても一般の人とはズレが生じてしまい、人間関係で苦労してしまいます。