単極型うつ病

精神状態の説明
単極型うつ病は生きるエネルギーが極端に低下している状態で、閉塞状況または展開性を失った停滞した状況に閉じ込められている状態です。そのため、精神症状としては気分の過度な落ち込み、ゆううつ感、意欲の低下、だるさが起こります。精神状態としては「申し訳ない」「皆に迷惑をかけている」といった罪悪感や罪責感情など自責感・自罰感の肥大、自分に対する無価値感の増大などが起こり、さらには自己滅却(「自分をなくそう」)といった感情のために希死念慮(自殺願望)が起ってくる状態です。また簡単なことでも決断できないといった状態でもあります。

身体症状
睡眠障害が起こり、食欲不振などで体重減少が起こります。頭がはっきりせず、頭が重い、疲労感がある、何事にも億劫になり人に会うのが嫌になったりします。胃潰瘍になる人もいます。

焦燥
うつ病になりますと必ずといっていいほど焦燥を感じることになります。「世間(会社)に遅れをとっている。早く治さないと」とか、「自分だけがこんな状態でいる。頑張らないと」といったように常に焦りの気持ちが起こります。それは「周りに迷惑をかけてはいけない」という責任感や対人配慮が過剰に働くためです。


人柄傾向と性癖

人柄傾向
実直で、他人から信頼されたり、尊敬されたり、模範的だとみられる人が多い。
相手に同調するために自分という存在が埋没する傾向にあります。人より前に出ることはなく、みんなの中で生きて、人のために尽力・献身して、他人に評価されてはじめて自分に価値を見出します。自分を滅却して社会に適応していることもあります。そのため尽力・献身する目標がなくなることがうつ病を発症する引き金になることがあります。

性癖
世の中を変えたい人を救いたいという気持ちから、世の中の凶悪な事件や悲惨な出来事などの情報を見たり聞いたりしがちで、悪い方面ばかりに目が向きがちです。そのため、悲壮な雰囲気を出している、あるいは包まれていることが多くみられます。


メカニズム

症状形成の要因
以下のものが主な要因例です。
<消耗>
本来、自分に使うべき心のエネルギーを外側(自分以外)に使いすぎたために起る場合があります。

<怒り>
怒りの感情が抑圧されてきたために起こっている場合があります。最近はよく言われるようになりましたが、うつ(鬱)という活力の出ない状態の裏には「怒り」という活力のある状態が隠されています。その怒り反動の形成としてうつ病が形成されている場合があります。言い換えれば、怒りを抑えようとエネルギーの流れを堰き止めており、エネルギーが滞っている状態といえます。

<喪失>
秩序や決まりごとが打ち破られ、喪失したという気持ちが起こることによって症状が出ている場合があります。喪失は「申し訳ない」「迷惑をかけた」といった罪悪感のかたちで表出されることが多くみられ、本人が喪失感を感じることはまずできません。


精神状態

自己の意識
うつ病における自己意識の状態について、他人には「私の状態は分かりっこない」と考えていることが多くみられます(躁鬱病圏に該当)。
  


類似症状

抑うつとの違い
うつ病は「抑うつ症」と一緒にされがちですが成り立ちが違います。うつ病は秩序の乱れや喪失体験によって活力が出ない状態であり、抑うつ症はつらい状況や状態を頑張りすぎ踏ん張りすぎて気分が低下状態になっているものです。
抑うつ症では、人と会いたいという気持ちもありますし、仕事も遊びもやる気がありますが、うつ病では、それはありません。
 ◇ 抑うつ症 = 頑張りすぎ踏ん張りすぎ等による気分の低下
 ◇ うつ病 = 秩序の乱れや喪失体験による活力の低下

誤診されやすい症状
以下に挙げる症状は、うつ病と誤診されやすいものです。
  橋本病
  疲労困憊状態
  抑うつ症
  アパシー(無気力症)


うつ病の種類について

概要
世間では「○○うつ病」といったようにすごい数のうつ病用語が生み出されいます。何か原因を見つけてきては「○○のうつ病だ」というわけです。しかし、それを真に受けてしまいますとその情報に振り回されて自分の本当の状態を見失いかねません。そうした用語を見つけて自分に当てはめるのではなくて、自分の状態をきちんと専門家に話すことの方が大事です。
たとえば、新型うつ病と呼ばれるものがあります。これは現代の社会状況や文化が反映されたうつ病でありますが、だからといって社会を変えればいいというわけではありません。

対抗反応・状態としてのうつ
うつ病にもさまざまありますが、一部のうつ病は症状であり、それ自体が病気なのではありません。何らかの別な問題がその裏にあって、それに本人が対抗しようとして反応している状態がうつ病と呼ばれるものです。たとえば風邪をひいたときにウイルスの活動性を弱めようとして熱を出すことに似ています



理解を深めるために

うつ病の意味
いつの間にか、「鬱(うつ)」には否定的なイメージしかなくなってしまいました。「うつ」になることは良くないことだという考えが一般的になってしまったからです。しかし、そうではありません。うつになること、言い換えれば活動性が下がることによって物事を慎重に考えられるようになり、精神的にも落ち着きます。ここを勘違いしてとらえられることが多く、うつになると精神的に不安定になると思われていますが、そうではありません。気分が落ち込んで不安定になっているのは色々な体験や出来事があったりして情緒が不安定になっているのであって、それがうつと直結するわけではないのです。


うつ病の薬物療法について

薬を飲むこと
うつ病という診断が下されると多くの場合にお薬が処方されます。そして症状の経過をみるというのが一般的な治療過程です。薬を飲むこと自体は悪いことではありません。心身の状態を安定的にするにはお薬が必要なときもあります。
ただ、薬を飲んでも考え方や自分が変わるわけではありません。根本的な治療に必要なのは人とのあいだで安心感や信頼感、精神的支えを得ることであり、そしてそのうえで、ご自身の物事に対する見方や解釈、そして生き方を変えていくことが大切です。
ストレスやつらさの原因になっているものをどうにかしていくのはもちろんですが、それ以上に上記のことが必要です。ですから「薬を飲んでいればそのうち治るだろう」というのではなく、心理カウンセリングや心理療法を受けていくことが大切です。


抗うつ薬中毒

概要
抗うつ薬中毒になっている人が数えきれないくらいいます。抗うつ薬をたくさん飲んでも効かないと分かっていながら、でも飲まないと不安でいられないという状態になっています。そのため抗うつ薬による症状、つまり副作用の症状で苦しまれている人がたくさんおられます。