不安神経症・社会不安障害

精神状態の説明
不安神経症とは突然不安に襲われ、どうしてよいのかわからなくなり、パニックにおちいったり、狼狽(ろうばい)してしまう精神状態です。
様々な「不安」が生じ、困ったことになったといった不安、これから何かが起こるんじゃないかといった不安、自分に災いがふりかかってくるんじゃないかといった不安、病気になるんじゃないかという不安など、本人の対処能力を超えるような出来事が起こって大変なことになるのではないかという不安にさいなまれます。
こうした底知れない不安に神経を使い続けるために活力が低下し、精神が衰弱ぎみになります。
身体状態としては、急激な心拍の異常、喘息、過呼吸、のどや手や足の違和感などが生じます。


不安をあおる社会

概要
現代は人間の不安をあおることで成り立っている部分があり、日本の場合はとくに皆と同じであることが求められる風潮があります。そのため、他人や平均値と比較させられて過剰に不安になることがみられます。

事例
劣等不安…人よりも能力が劣っているのではないかという不安
出遅れ不安…自分は出遅れているのではないかという不安
格好不安…格好や体型が良くないと思われているのではという不安
健康不安…将来、病気になるのではないかという不安
禍事(まがごと)不安…なにか不吉なことが起こるのではないかという不安
未来不安…将来が見通せない不安
金銭不安…貧乏になってしまうのではないかという不安
死の不安…死ぬことへの不安
自己漏洩不安…自分の秘密がばれるのではないかという不安
子育て不安…子育てがちゃんとできていないのではないかという不安
など


幸せ不安(幸せ恐怖)

概要
幸せ不安とは、幸せを感じるとその次に不幸になるのではないかという不安が起こったり、あるいは、自分が幸せでいることは申し訳ないという気持ちや罪悪感が起こってくるので、わざわざ不幸な道や苦労する道を歩んでいってしまうものです。
周りの人から見れば「自分が幸せになるようなことをすれば幸せになれるのに」と思うのですが、本人にとってはそう考えることができないのです。
これは、何らかの事情により、本人にとっては幸せよりも不幸を選択しているほうが気楽でいられるという心理がある場合があります。


見捨てられ不安(嫌われる不安)

概要
対人関係における「見捨てられ不安(嫌われる不安)」は、周りにいる人たちが自分を嫌いになって離れていってしまうのではないか、という「見放されるの不安」のことです。
いまは自分と一緒にいるけれども、自分以外の誰かと仲良くなって、結局は一人ぼっちになってしまうのではないかという不安です。その不安や恐怖のために、相手に好まれるようにお膳立てしたり、相手に尽くしたり、自分の気持ちを我慢して相手の好みや調子に合わせたりします。
一方で、極度の不安から、相手にきつい言葉を放ったり、悪態をついたり、相手の愛情を何度も試したり確認したりすることが起こります。また、相手から別れを告げられてショックを受けないように、自分から縁を切ったりすることがあります。


遺伝不安

概要
遺伝子によって人間の色々なことが分かってきています。そして、遺伝子検査などをすることで自分の詳細を知ることができるようにもなっています。
一方で、遺伝をむやみに恐れることも増えています。自分には遺伝性の病気があるのではないかといった不安や、結婚や子どもに対して悪影響を与えたくないという不安です。


体への影響

心身症
過度な不安や心配は意識に変容をもたらし、脳の情報処理が変わることで神経に痛みを生じさせます。器質的要因がないのにもかかわらず痛みが生じる、あるいは咳(せき)などの症状が出ていたり、症状が身体の色々な部位に転々として出てくる(症状移動)といったことが起こります。


補足

抗不安剤中毒
抗不安剤中毒になっている人が数えきれないくらいいます。抗不安剤(抗不安薬)をたくさん飲んでも効かないと分かっていながら、でも飲まないと不安でいられないという状態になっています。そのため抗不安剤による症状、つまり副作用の症状で苦しまれている人がたくさんおられます。