ノイローゼ(神経症)

精神状態の説明
ノイローゼ(神経症)は、意識状態がごちゃごちゃになって不安や恐怖があふれ出し、それで緊張が引き起こされ、心身や精神がおかしくなっていると感じられる状態です。
ノイローゼ(神経症)という名称は様々な症状や状態の総称のようなものでもあり、それゆえ生じてくる症状が一つだけということはほとんどなく、いくつも併発していることがほとんどです。厳密に言えば、いろいろな形をとって生じてくると言ったほうが正しいです。

神経症症状として、たとえば心臓神経症(パニック障害)や対人恐怖症、退却神経症、完全強迫症、摂食障害、炎症や麻痺、抜毛症、書痙、どもり、喘息などさまざまあります。
こうした症状がなぜ生じてくるかの一つの理由として、自分の秩序や世界観が崩れていて、それを再構築しようとしているから、というのがあります。秩序や世界観を再構築するために、ひたすら考え抜くことによって何かを見出そうとしたり、何かを完ぺきに仕上げる(構築する)までは自分を許さなかったり、何度も同じ疑念がわいてくるので何度も確認作業を繰り返します。ですが、その行為自体で自身が苦しくなってしまいます。

また、秩序や世界観が崩れた状態では、外出することが難しいです。外に出て何かあったらどうしようと恐怖が生じますし、人が大勢いるところでは逃げ場がありませんから苦しくなってしまいます。
しかしながら、そこまで苦しんでいても、人から見ると気楽に、自由気ままに生きているように見えます。なぜなら人に対しては何でもないようにみせることができるからです。

体感感覚
神経症では以下のような体感感覚が起こります。
◇ 生きることの模索・生きづらさ
◇ 対人恐怖などの恐怖症、それによる体の硬直や動けなさ、緊張
◇ 極度の不安、それによるパニック状態、発作、思考の停止
◇ 様々な症状(喘息、痛み、めまい、麻痺、アトピー、チック、吃音など)
◇ 死の恐怖
◇ 焦燥感、イライラ、絶望感


  


思考の渦(強迫思考)

概要
神経症の苦しみの一つは、「思考の渦」に巻き込まれることです。
様々なことを深く考えすぎてしまい、「わかっていても止められない強迫」に苦しむものです。「生きるとは何か」「私とは何か」といった存在意味の問題から死の問題などありとあらゆることが湧き出てきます。
他人の意識が極度に気になり「私を格好悪いと思っているんじゃないか?」とか「私をみんなから浮いた存在と思っているじゃないか?」と考えてしまい、恥の意識にさいなまれます。
また自分を責めすぎてしまう自責感情が肥大化し、「私は世の中の役になっていない」「私は価値のない存在」と強迫的に自分を責め続け、自分を追いつめてしまいます。さらには、「私が存在していることが不幸の根源である。私が世の中に悪影響を与えている」といったような加害意識や罪悪感に苦しめられます。

いろいろ考えすぎてしまう精神状態から抜け出せず混沌とした世界にいるような感じになり、それを人に話しても誰にも自分の思いや考えが理解されないので、そのつらさが余計に苦しさを増幅させ、「自分は人には理解されない」「自分は要らない存在なのだ」感じてしまうことで死にたい気持ちになりがちです。
こうした底知れない不安が心的エネルギーをひたすら費消させつづけるために、精神が衰弱ぎみになります。また身体には原因のわからない様々な症状が出てきます。


症状の出方

概要
神経症は大きく分けて2つに分けられます。一つは症状で出ている状態で、もう一つは行動に出ている状態です。
症状で出ている状態は、精神の具合が悪かったり身体に症状が出ている場合です(症状神経症)。
行動に出ている状態は、身体症状は出ず、問題行動を起こしたり、異常行動となってあらわれたり、あるいは逃げたり回避したりする行動をとる場合です(性格神経症)。


メカニズム

症状形成の要因
一つには、上記の「自分の秩序や世界観が崩れていて、それを再構築しようとしている」ことが挙げられます。
一つには、葛藤を解決しようと“頑張る力(エネルギー)”や、家庭や世の中、社会通念やこれまでの歴史を自分一人で変えていこうとする“努力や抵抗”が症状をつくりだしています。葛藤状態である「こうしたいけれども、こうできない」という状態がずっと長く続き、極度に達したために症状が出ています。
一つには、「倫理規範の内在化」も症状形成に大きな影響を及ぼしています。道徳性や倫理、あるいは「〜すべき」という規範が心の中に強く形成されているために、徹底性、几帳面、責任感、誠実、秩序などが過剰に身につき、正義感が強く完璧思考と白黒思考で自分を律しようとする力が強く、それが症状を強固にしています。

人格の関連性
神経症になる素因として以下のような傾向がみられます。
怒りがたまっていること
激しい嫉妬心があること
自己否定感情があること
自己喪失がおこっていること
相手を優先させて自分は遠慮する姿勢があること
失敗することへの怖れがあること、そのため完璧思考になっていること
叱られること・責められるへの恐怖があること
極度の恥ずかしさがあること
自信喪失と自信過剰の間を行ったり来たりしていること


症状シフト

概要
神経症(ノイローゼ)は様々な形をとってあわられ、そして症状が移動します。これを症状シフトと言います。たとえばパニック障害/広場恐怖として出てきたり、対人恐怖/視線恐怖という形をとって出てきたりします。心気症というかたちでも出てきます。また身体には「どもり」「赤面」「ヒステリー」「書痙」というかたちで出てきたりします。


愛情不安との関連

等価症と攻撃性
「自分は愛されていないかもしれない」という不安が多くの人が持っていますが、しかし、通常その不安は抑圧されるので普段はあまり感じません。そして、「愛されてない」という不安が積もってくると抑圧はさらに強化され、その不安は「病気の恐怖」とか「頭痛」とか「吐き気」といった症状(等価症)として出てきます。
つまり、抑圧が十分に働いている場合は愛されていないと感じる不安が身体症状として出てきます。逆に、抑圧が十分に働かないと、その感情は生(なま)で出てきてしまうので、外に向けて攻撃的になったり突然悲しくなったりします。


喘息やのどの症状について

身体での表現
吐き気がする、のどが痛む、喘息が起こるといった、のどに関する症状は、神経症には非常によくみられます。これは、今まで言いたいことを我慢してきたこととものすごく関係しています。つまり、感情を吐き出したい、言いたいことを吐き出したいという隠れた願望が、のどという部位を通して表現しているのです。