身体表現性障害
■概要
身体表現性障害とは、病院などでの検査により器質的な身体疾患がみられないにもかかわらず、痛み、発作、麻痺などといった身体症状が出ている状態をいいます。たとえば、目や顔、気管支喘息や喉の痛み、腰痛や足の痛み、胃痛や下痢・便秘などの症状、めまいや頭痛などの身体症状です。
■分類
疼痛性障害: 腰や足などに痛みが出る症状
転換性障害: 歩く、立つ、握る、見る、しゃべる等の運動機能の障害。
腕や脚の麻痺。感覚機能の障害。
身体化障害: 胃腸の症状(吐気や下痢など)。性的症状(生理不順など)。
心気症: 自分は病気にかかっているという恐怖や考えにとらわれている状態
身体醜形障害: 自分の身体的外見に欠陥があるという考えにとらわれている状態
メカニズム
■発症の仕組み
心理(自己防衛)機制により、つらさや苦しみ、怒りや寂しさ、葛藤といった感情や気持ちを本人が感じないように抑圧しているのですが、しかしそれにも限界があり、抑圧しすぎると病気になってしまいます。それを避けるために、それらの感情を身体が肩代わりして症状として放出する、つまり発症するという仕組みです。
■身体言語
症状が出る理由は、言葉では表現できない、あるいは言いたくても言えないことを身体が表現してくれるというメカニズムです。これを「身体言語」といいます。身体が出す言葉という意味です。
たとえば、喉が詰まったり痛む人は「言いたいことがたくさんあるのに言えない状況にある」といったことがみられます。そういう人の中には気管支喘息を発症している人もいます。またお腹にガスがたまる人や便秘が起こる人も同じ状況にいることがみられます。逆に、言いたいことを出したいと願っている人は下痢や吐き気、ゲップ、嘔吐に悩まされていたりします。
怒りを抱えている人は胃や十二指腸に炎症や潰瘍がみられます。気持ちの荒れが身体の荒れにあらわれます。苦悩することが多い人は頭痛やめまいがみられます。
そして皮膚や血管は気分や環境状況に応じて敏感に反応し、じんましんやアトピー、帯状疱疹、反応性アレルギーといった症状があらわれます。
似た症状との違い
■概要
身体表現性障害と似た症状に「心身症」と呼ばれるものがあります。これは症状としては身体表現性障害と同じような症状が出るものですが、病院などで検査をした際に器質的な身体疾患がみられることが多い症状のことをいいます。
身体表現性障害は本来自分が感じるべき感情を感じないようにしてしまうので、その抑えこまれた感情を身体が症状にしてあらわすものです。一方で心身症は、つらいという気持ちの抑圧がしっかりと働かずに、つらさが直に症状として身体に出るものです。
症状例
■神経性腹部緊満症
神経性腹部緊満症とは過緊張による下腹部の膨隆(ぼうりゅう)です。身体化障害あるいは転換性障害の一種で、処理できないでいる内的葛藤や不安、怒り、悲しみなどが、身体化としての腹壁筋の過緊張をもたらして下腹部の膨隆を引き起こしています。