医原神経症(自己啓発系カウンセリング信奉)
■概要
心理カウンセリングや民間療法、医学、スピリチュアルや占い、そして自己啓発や人生論などの勉強を中途半端に学んだ人が、悩んでいる人の人生相談やセラピー相談を受けて、悩んでいる人を余計に悩ませ苦しませてしまうのを医原神経症といいます。
そういう非専門家は自分自身も苦しんできた経験をもっているために、困っている人の気持ちをくむのがうまく、「こうすればいい」とか「こうすることが一番」といった明確で分かりやすく筋の通ったことや気の利いたことを言い、相手が納得し賛同してしまうような話をするために、悩んでいる人は信じてしまいます。
しかし、この行為は非専門家本人が無自覚に「過去に自分自身が悩んできた世界」に悩んでいる人たちを引き入れてしまっている行為なのです。
たとえば、自分の知識をもって「こうしなきゃダメ」とか「こうしているからダメ」といった説教をしたり、「つらいのはみんなも同じ」などと諭そうとしたりします。
また、わかりやすい原因を見つけてきて、その原因を悪とみなして、その悪を除去すればすぐに解決するといった単純な因果律をつかうことが多くみられます。たとえば、「親が悪い」とか「先生が悪い」とか「上司が悪い」といって、それを改善させようとする。そしてその結果、一見よくなったようにみえるのですが、結局のところ、クライエントを苦しませたり、抑うつ症にさせてしまったりするのです。
また、自分の気持ちをコントロールする手法や、相手との会話術などのテクニックを教えたりして、それらを身につけることによって目的を達する、つまり相手や自分を操作することで悩みを解決しようとする傾向が色濃く出ます。
しかし、こうした非専門家は相手を受けいれたり治したりするだけの技量はないので、相談の重さに耐えきれなくなってくると、カウンセリングはもう無理ですと放棄したり、行き詰った状況の責任をクライアントのせいにしたりします。
その一方で、カウンセリング技術では右に出る者はいないとか、何千人もの人にカウンセリングをしてきたとか、企業研修の実績が多数あるなどと謳っていることが多くみられます。
カウンセリングというのは、自分自身や相手を操作して変えていこうとするものではなく、悩んでいる人の気持ちを本気で聴いてあげて寄り添っていくことです。悩んでいる人の気持ちを大切にし尊重していくのがカウンセリングです。